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我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ! もうもうと立ち込める砂塵があたりを覆わなくなったころ、爆心地には奇妙なものがあった。 「・・・なによこれ」 サモン・サーヴァントがようやく成功し、歓喜に満ち溢れていたルイズは自分が召喚した それ を見て表情を曇らせた。 「ミスタ・コルベール!やり直しをさせて下さい!!」 「だめです。儀式は神聖なものです」 「でっ、でも! あれ どうみても生き物じゃありません!」 「早くコントラクト・サーヴァントを行いなさい。そうでなければ進級できませんよ」 「そんな・・・」 我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン この者に祝福を与え、我の使い魔となせ ルイズは召喚した それ に対して契約を行った。 それ は人よりもはるかに大きく、四角く、白かった。 それ は人ではなかった。触れてみるとひんやりとしていた。 それ は人を多く収容できるほどの空洞と屋根を持っていた。 「本当になんなのよ これ ・・・ あら、なにかしらこれ」 ルイズは それ の近くに一枚の紙が落ちていることに気がついた。 その紙にはこう書かれていた。 「やっぱりイナバ百人乗っても大丈夫!」 株式会社稲葉製作所より「イナバ物置」を召喚
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前ページ次ページつかわれるもの 第01話 呼び出されたもの ここトリステイン魔法学院では、現在二年生の「春の使い魔召喚の儀式」の真っ最中だ。 午後から始まったこの儀式だが、生徒達は順調に召喚に成功して行き、一人の女生徒を残すのみ。 しかしその女生徒が召喚の魔法を唱えても……聞こえてくるのは儀式を終えた生徒や使い魔の叫び声と―――爆発音だけであった。 その女生徒――ルイズはこれで16度目となる爆発にも決して諦めようともせず、ゆっくりと深呼吸を行って精神を集中させていた。 (今度こそ大丈夫だ、落ち着こう……) 周りから聞こえて来る罵声と悲鳴、教師がまた明日行えば……と言ってくるが、ルイズはもう一度だけやらせて下さい!と半ば強引に押し切った。 (今まで沢山練習したんだ、落ち着いてやれば成功するわよッ……) そして再び杖を掲げ、声を張り上げた。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 ――再び巻き起こる轟音を伴った大爆発、今までで最大の規模だ。 太った一人の生徒が巻き込まれ、焼き過ぎて焦げてしまった豚のように真っ黒になってしまった。 ルイズはついに地面に崩れ落ちた。 今までの努力は、勉強は、練習は、無駄だったのだろうか。 所詮「ゼロ」のルイズには召喚なんか無理だったのだろうか。 そう考えると涙が出そうになった……が、周りの叫び声で我に返った。 「お、おい!何か動いてるぞ!」 「あのルイズが成功したのか!?」 「マリコルヌ!傷は深いぞ!しっかりしろ!!!」 何かが、居る? 勢い良く顔を上げ、土煙の中を確認すべく目を凝らす。 そこには確かに何か動くものが存在し、ルイズは期待に胸を膨らませた。 (ドラゴン?グリフォン?この際だったら鷲とか、梟とか、何でも良いわ!) そして段々と土煙が晴れて行き、そこに居たのは…… 「あ、亜人!?」 獣の耳と尾を持つ女性と、鷲の翼のような耳を持つ女性の二人だった。 カルラが目を開いた時、目の前は土煙で覆われていた。 そして辺りからは罵声や悲鳴、そして驚愕の声が聞こえて来る。 落ち着いて周囲を見回すと、隣にトウカが倒れているのが見えた。 「トウカー、死んでませんわよねー?」 ゆっさゆっさとトウカの身体を揺する。 呼吸はしているようだから死んではいないだろう。 片手で顔を抑えながら、トウカはゆっくりと上体を起こした。 「んー……ここは?」 「良く判りませんけど、生きてはいるみたいですわねー」 「先程居た戦場では無いみたいだな……」 「どうやら"あの鏡"で何処かに飛ばされた、と考えるのが妥当ですわね……」 結論から言えば、カルラの読みは正しかった。 土煙が晴れて目にしたのは、珍妙な衣装に身を包んだ子供達であった。 それを見守っていた教師――二つ名「炎蛇」のコルベールは、目の前で起こった事態に困り果てていた。 何しろ亜人が召喚された、というだけで相当の異常事態であると言うのに、あまつさえそれが二人も居るのだ。困るのも当然と言えば当然なのだが。 試しに彼女達に『ディテクト・マジック』を使ってみたのが、結果として両方から魔力反応があった。 やはり先住魔法が使える、と考えるべきなのだろう。いきなり暴れ出そうものなら手が付けられない事は明白だ。 そして、コルベールを悩ませる理由は彼女達の存在だけでは無かった。 「ミスタ・コルベール……私はどうすれば良いのでしょうか……」 そう、彼女達を召喚したのが――ルイズだと言う事だ。 コルベール自身、彼女の努力は良く判っているつもりでいた。 そしてルイズに才能が無いのでは無く、まだ開花していないだけだ、と考えていた。 ルイズが今日の儀式の為に、毎日毎日努力をしていた事を知っていた。 だからこそ、この機会に召喚できずに退学、という事態だけは絶対に避けて欲しかった。 もしこれを認めなかったら、次に召喚する時に成功する保証は……無い。 コルベールは考える。 召喚される使い魔は、主にとって最も必要とされる存在だ。 恐らく何らかの理由で、彼女達は呼ばれたのだろう。 今更何をした所で、杖はもう振られたのだ。ならばこの流れに全てを任せよう。 もしこの女性達が暴れ出そうものなら、自身が全力で止めてみせる。生徒達を守ってみせる。 コルベールは意を決して、ルイズに声を掛けた。 「前例には無いが……例外は認めらない。春の使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先する」 「彼女達のどちらか片方と、『コントラクト・サーヴァント』を」 前ページ次ページつかわれるもの
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前ページ次ページ鋼の使い魔 目を覚ました時、彼は清潔に整えられた一室のベッドに横たわっていた。彼は傷づいていた。深い火傷と、切り傷と、煙を吸って肺を焦がしていたのだ。 しかし、今目を覚ました彼は、自分の体にそのような瑕疵がないことに気付いた。飛び起きる彼はさらに、自分が鎧を脱いでいる事に気付く。 「……此処は……どこだ…」 仕切りの向こうから人が入ってきた。少女一人と、頭髪の薄くなった男性が一人。 「目を覚ましたようですね」 男は彼に話しかけてくる。 「ここはトリステイン魔法学院。貴方はこのミス・ヴァリエールにサモン・サーヴァントでよび出されたのです」 時間は遡る。 トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚の儀式。それは二年次に進級する学生達が使い魔を召喚、契約し、自身の魔法属性と専門課程を決める大事な儀式である。 しかし彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、既に使い魔召喚の口上を数十回繰り返していたが、辺りには爆発によって地面に穿たれたクレーターが散見されるばかりで、使い魔に相応しいような生き物は影も見当たらなかった。 「ゼロのルイズは使い魔も召喚できないのか!」 「しょうがないよなぁ、だってゼロのルイズだしさー」 ギャラリーの心無い声にルイズの心は張り裂けそうだった。 杖を握る指が震える。忸怩とした気持ちと絶望が顔を覆う。 生徒たちを見守る役目を受けた教師コルベールは、ルイズを囲む生徒たちを下がらせ、ルイズの傍に立った。 「ミス・ヴァリエール。気負ってはいけませんよ」 「ミスタ・コルベール……」 己の無能に落胆するルイズに、あくまでも優しく、しかし強い心を込めてコルベールは説く。 「使い魔は、主人の半身ともなる大事な友です。そんなにしょげていては、やってきてくれませんよ」 「でも…私は…」 「無心に願いなさい。さすればきっと、始祖ブリミルの導きで、貴方にふさわしい使い魔を呼び寄せることができるはずです」 コルベールの説得にルイズは呼吸を整え、再び杖を掲げた。 「宇宙の果てのどこかにいる……わたしの僕よ。神聖で美しく、そして、強 力な使い魔よ。わたしは心より求め……訴えるわ。我が導きに……答えなさいッ!!」 ルイズは願った。自分にも使い魔を、誰にも侮られない使い魔をください。魔法が使えない私にせめて胸を張れるような使い魔を……。 振り込んだ杖の先の地面が、光を放って爆発する。巻き上がる土煙は、これまでの失敗よりもずっと激しく立ち昇り、広場を包んだ。 「ケホ、ケホ……つ、使い魔は……?」 土煙が収まらないまま、ルイズとコルベールは爆発の中心を覗く。カチャリ、と金属が擦れるような音がする。 徐々に収まっていく土煙の中に倒れていた、一人の男。煤に汚れた金髪と肌、精巧さと合理性を合わせたような見事な鎧をつけた意丈夫の男が、そこに倒れていたのだ。 「私達はひとまず、貴方の体の怪我や火傷を治すために、学院の医療室に運ばせていただきました」 「……」 男は言葉もない。目を芝立たせ、コルベールの説明を聞いていた。 「貴方の意思を聞かずに、コンクラクト・サーヴァントを行わせたことについては、ミス・ヴァリエールに責任はありません。ひとえに教師として私が指示した事です」 コルベールは男の左手に記されたルーンを指す。 「これは使い魔として契約したものに記される使い魔のルーンです。使い魔に関する詳しい話は、そこのミス・ヴァリエール本人に聞くのが良いでしょう」 話を振られたルイズは、コルベールと男の顔を交互に見るが、何を口出していいのかわからず、顔を背けてしまった。 「ひとまず此処は引き払いましょう。身に着けていたものはミス・ヴァリエールの部屋に送らせて頂きました。ではミス・ヴァリエール。私はこれで」 男はルイズにつれられてルイズの部屋に移った。部屋の隅に男が身に着けていた鎧や装飾品、そして「剣の抜かれた鞘」が積まれていた。 男は鞘を手に取りルイズに聞いた。 「これに収まる剣があったはずなんだが、知らないか」 「知らないわよ。あんたが召喚された時、最初から剣なんで入ってなかったわ。あんたが身に着けていたものは、そこにおいてあるので全部よ」 ベッドに腰掛け、男をまじまじと見るルイズ。 「使い魔の契約もしちゃったし、今日からあんたは私の使い魔よまず……」 「月が二つある……」 話を切るように男が呟く。男は窓から見える大小の月を見ていた。 「どうして月が二つあるんだ?変じゃないか」 「何言ってるのよ。月は二つに決まってるじゃない」 そう答えると、男の顔色が変わったのがルイズにも判った。どこか険しい色を含んでいる。 「グラン・タイユという地名を知っているか」 「グラン・タイユ?知らないわね。……何、月も見えないような田舎から来たって言うの?」 「ナ国は?ヤーデ伯というのに聞き覚えは?」 「なにそれ?知らないわ」 ルイズが質問に答える度に、男の顔に何か濃いものが挿していく。 「……アニマと術がわかるか?」 「アニマって何?術って魔法の事でしょ。あんた一体どれだけ田舎者よ」 質問が途切れた。男は座り込んでうつむいてしまったのだ。 「……ちょっと、あんたさっきから質問ばっかりして。なんなのよ……」 ルイズにしてもたまったものでなかった。やっと呼び出した使い魔は、傷だらけの平民で、傷を治してやったら、今度はよく分からないことを色々と聞いてくるのだから。 「……ルイズ、と言ったな、お前」 「お前とは主人に対して失礼ね。ルイズ様、とかご主人様、とかいえないの」 「俺はお前がどんな人間か判らないからな。敬語をつかうべきかどうか知らないね」 とりあえず、と、男は言葉を一旦切る。 「俺は随分と遠くにやってきてしまったらしい。術もない、アニマも知らない。そんな場所があるなんてな……」 「……はぁ、どうしてこんな田舎者を使い魔にさせたのでしょうか。始祖とコルベール先生を恨みます」 ルイズと男はお互いに別々の理由で、どこか悲嘆にくれていたが、ルイズは改めて向き直して、男に話しかけた。 「まぁお互い色々と思うところはあるけど、あんたは、私の、使い魔になったんだから。やるべき事はやってもらわなくちゃいけないのよ」 男もルイズに顔を向けて話を聞く。 「じゃあ、何をすればいいんだ。言っておくけど俺は何もできないぞ」 「使い魔はまず、主人と感覚の共有ができるはずなんだけど……無理みたいね」 みたいだな、と男は相槌。 「次に、使い魔は主人に望むものを見つけてくるのよ。秘薬とかね」 「薬草の類なら知らなくもないが、あんまり当てになりそうにないな」 そう、とルイズが相槌。 「最後に使い魔は主人の身を守るんだけど……鎧と鞘着けてたんだから、腕の覚えはあるんでしょ」 「まぁな。……そうでなければ今まで生きていなかっただろうしな」 「……まぁいいわ。とりあえず私の護衛兼、小間使いとして置いてあげる。ありがたく思いなさい」 ひとまず話すことは話したのでルイズは気持ちの整理がつき始めていた。もう使い魔として契約してしまったのだから、こいつを使いこなさなければならないと、そう腹に決め始めていた。 「……元の場所に帰る方法はないのか?」 「ないわ。サモン・サーヴァントは呼び出すだけ。そもそも人間が召喚されるなんて、今まで聞いたことも無いし」 「でも俺は此処に呼び出された。しかも俺が気を失っている間に、こんなものまでつけて」 左手の甲をルイズに見えるように男は掲げた。 「ぐ……仕方なかったのよ!使い魔召喚を失敗したら、私はここを追い出されてしまうわ。領地に戻されても、お母様やお父様に合わす顔もないし……」 顔を背けてぽつぽつと声にならない呟きが漏れていくルイズ。 「……本当に帰れないのか」 「ええ……やっぱり帰りたいわよね」 「そうだな。向こうにはたくさん、遣り残した事があるんだ」 男の眼は静かに前を見ている。ルイズは少しだけ、そんな男がまぶしい。 「しかし帰れないんじゃ仕方が無いな…。使い魔、やればいいんだろ」 「……そうよ。やってもらわなくちゃ、困るわ」 あくまで男に対し主人として命令する立場に立ちたいルイズはしかし、男が身の処遇に納得してくれたことに安堵したのだった。 「……とりあえず、今日はもう遅いから寝るわ」 ベッドの上で服を脱いで下着姿になったルイズは、男に服を投げつける。 「洗濯物。明日洗っておいて頂戴。後、朝になったら起こしてくれる?」 男は目の前に投げつけられたルイズの服に唖然としていた。 「男に自分の服を洗わせて恥ずかしくないのか?」 「だってあんたは使い魔だもの」 おやすみ、とベッドにもぐりこんだルイズは、気付いたように男を見て、 「そういえば、名前を聞いてなかったわね」 「俺も教えた覚えが無いな」 床に毛布を敷いて寝床を作っていた男も答えた。 「名前は?田舎者でも名前はあるんでしょう?」 ごろりと横になったまま、 「名前か……」 男は自らを名乗った。 「俺の名前は、ギュスターヴ」 前ページ次ページ鋼の使い魔
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ゼロの番鳥外伝『ルイズ最強伝説』 Q.ペットショップとギーシュが決闘してる間、逃げたキュルケとそれを追い駆けたルイズは何をしていたんですか? A.こんな事をやっていました ドカーン!バゴーン!ドカーン!バゴーン! 学院に爆発音が響き渡る。勿論、その原因は私の魔法だ 「あはははははははははは!!!!!」 口から溢れる笑いを止める事が出来ない。得体の知れない恍惚感が体を震わせる!何かカ・イ・カ・ン!最高にハイ!ってやつよ! 脳が破壊と破壊と破壊を求めて矢継ぎ早に指示を出す。 私の笑いに反応したのか、逃げているキュルケが振り返ってこっちを見た。ん?何で脅えたような顔をするんだろ? 悪鬼を見たような顔をするなんて、私の繊細な神経が酷く傷ついたわ! 「大人しく吹っ飛ばされなさい!」 魔力を注ぎ呪を紡ぎ、発動の引き鉄となる杖を振って、私が唯一使える大得意な魔法を放つ! ドン! やった!ドンピシャのタイミングで爆発が起こった! キュルケが予期したように回避行動を取ったが、私の狙いはキュルケでは無く、その頭上! ガラガラガラガラ・・・・・・・・・「うひゃぁっ!?」 みっとも無い叫び声を出しながら天井の崩落に巻き込まれるキュルケ キュルケの生き埋めの出来あがり♪と小躍りしそうになったが、下半身しか埋もれてないのに気付いた。チッ。 瓦礫の下から何とか抜け出そうと足掻いてる。くふふふ、無様ね。トドメをさしてあげるわ。 「んふふふふふ・・・・・・」 わざとらしく足音と笑い声を立てながらキュルケの前に立つ。 キュルケは慌てて床に転がった杖を取ろうとしたが、その手が届くより先に、私の足が廊下の彼方に杖を蹴り飛ばす。 顔面が蒼白になるキュルケ、私の狙いに気付いたようだ。 「ル、ルイズ、もう冗談は止めましょ?ね?杖なんか掲げてると危ないわよ?私達友達でしょ?」 先程までとは一変して哀願口調になる。ふん、それで男は騙せるとは思うけどこのルイズ様にはそんなの通用しないわよ 死刑を執行しようと、杖を振って呪文を唱え―――そこで私は気付いた!キュルケの目が私では無く、私の後ろを見ている事に! 「エアハンマー!」 刹那、転がって回避した私の横を空気の槌が通過――――そして ドゴン!「ふげっ!」 私が回避した事により、直線状に並んでいたキュルケに当たった。身動きできないんだからどうやっても避ける事は出来ないわよね。 潰れた蛙のよう声を出して気絶するキュルケ。ああ、何て可哀想なの!とても嬉しいわ私!うふふふふふ 大声で笑いたかったが。それよりも私に攻撃しようとした不埒者にお仕置きするのが先。 「ミス・ヴァリエール!杖を捨てろ!!」 下手人は魔法学院の先生の一人だった。生徒に魔法を使うなんて野蛮にも程があるわよ。 「杖を早く捨てて!頭の上で手を組んで床に跪け!早く!」 私は声を聞き流して、その先生に近づく。 どうせ教師の職権を乱用して、世界三大美少女に入るほど可憐な私に性的な悪戯をする気満々だろうし!命令を聞く気は無いのよ! 「ヴァリエール!指示に従え!!」 焦れたように叫ぶが私はそんなのを聞く気は一切無い。 距離が5メイルを切ってから―――私は一気に走り出した。 「くそっ!どうなっても知らんぞ!?エアハンマー!」 先生が杖を振り空気の槌が私の腹部に直撃―――する寸前! 私は滑るような足捌きで突如体を平行移動させる。ドガッ!「ひげぇ!」 後ろからキュルケの声が聞こえた、どうやらまた私が回避したことにより外れた弾の直撃をくらったらしい。 いい気味ね 「はぁぁぁ!?」 回避するとは思わなかったのか、化物を見るような眼で私を見つめる先生。 あんなんで倒せると思うとは甘い甘い。ココアにミルクと砂糖をたっぷり入れて生クリームを乗っけたより甘いわよ! 時が止まって見えるほど集中した私には、服の下の筋肉の微細な動きまで見えたんだから! 「おおおお!?」 魔法を放つ余裕が無いのか無我夢中に杖を振って私を殴り付けようとするが。 私は身を屈めてそれを回避!その動きのままに先生の懐に潜りこんだ!顔に驚愕の表情を張り付けているのが良く見える。 そして―――その身を屈めた運動による腰と足の力は腕に伝えられ!突き出される拳! 当たる寸前にその拳を柔らかく開き!粘りつくような掌を目標に捻り込む!狙いは先生の鳩尾! ドン! 破壊的な音が私の腕を通じて脳に聞こえた!カ・イ・カ・ン! 強烈な一撃をくらった先生は息を吐いてその場に崩れ落―――駄目押しぃぃ! 捻りを加えた足が顎を真上に蹴り飛ばす、上体が浮いて無防備な体を一瞬硬直させた。 私はその場でくるりと回ると、持っている杖を胴体に突き付け!即座に魔法を使い爆発を起こす! ドゴォォォン! 零距離で起きた爆発をまともにくらい、吹っ飛ばされて壁にめり込む先生。白目を向いて気絶してる。んん?泡まで吹いてる。軟いわね と言うか、ほぼ至近距離で爆発起こしたから私も煤塗れになっちゃった。後でペットショップに洗濯させないといけないわね なんて事を私が考えていると。 「ヴァリエール!!!!」 叫び声が聞こえた方向を見ると新手の先生の姿が!敵が増えた! モタモタしてられないわ! 「それぇ!」 倒した敵の杖を拾って思いきり投げ付ける。自分でも100点満点と思う程に洗練された投球フォームだ。 メイジにとって杖は命の次に大事な物。魔法学院の先生方がそれを知らないわけがない。 凄いスピードで一直線に飛ぶ凶器となった杖を、他人の物だからと言って魔法で撃ち落すわけにもいかず、私の目論見通りにしゃがんで回避する。 それを見てほくそ笑む私。その判断は、この戦いにおいて致命傷となる隙を作り出すわよ! 「!?」 飛ぶ杖に続いて突進していた私に気付いた先生が慌てた動作で杖を振り上げる。 だけど遅い遅い。気付くのが数秒遅いわね! ゴガッ! 私の頭突きが先生の顔面にクリーンヒット!噴水のように鼻血を噴出した!・・・うひゃっ!鼻血が頭にかかった!許せない! 反射的に顔を押さえる先生に、私の渾身の体当りが決まる。 倒れた先生の上に馬乗りになる私。俗に言うマウントポジションってやつだ。 鼻を押さえる先生の顔が恐怖に歪む。私が何をするか理解したようだ・・・・・・それも哀れに思うほど遅いんだけどね。 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!! 顔面に拳の連打をおみまいする。先生は狂ったように暴れるが、重心をピンポイントで押える私から逃れる事は出来ない。 それから十数秒後、ピクリとも動かなくなった先生の体の上から立ち上がる私。 目の端に又人影が見えた。敵ね!?敵は皆殺しの全殺しでズタズタのグチャグチャのミンチの刑よ!あははははははははは! 振り向くと、腰が抜けたような格好で後退りする女教師の姿を発見。補足して全速突進! 私が走ってくるに気付いたのか、泣きそうな顔が更に泣きそうになって持っている杖を振り、火を飛ばす。 「遅い!」 走りを止めずに首を曲げてその攻撃を回避。遅い遅い遅すぎる!集中している私にはスローすぎて欠伸が出るわよ! 絶望的な表情でそれを見た先生は悲鳴を上げながら、再度杖を振り巨大な火球を発射した。 それは『火』と『火』を使った攻撃呪文『フレイム・ボール』!小型の太陽が私を襲う! その火球が、体に当たって私を炭にするだろう一瞬前――――床を蹴り、壁を蹴って天井に届くほど高く跳躍しスーパーにビューティフルな形で回避。 それにしても『フレイム・ボール』なんて・・・・・・・生徒に向けて使うものじゃないわよ!危ないわね!これはお仕置きね! 「天誅!」 そのまま天井を蹴った勢いと重力加速を加えた私の蹴りが女教師の腹に決まった。 まあ、肋骨が粉砕して、内臓が破裂しかける程度に手加減しちゃったけど。私も甘いわね 甘美な勝利の感覚が脳に伝わり、知らず知らずの内に顔の表情が笑みを形作る。 「私が最強よぉぉぉぉぉっ!!!!」 ガッツポーズをとって叫び声を上げようとした所で、何かが鳴る音が聞こえて・・・・・・ 私の・・・・・・意識は・・・闇に落ちて・・行った・・・・・・zzzzz 倒れたルイズを見てやっと安心するコルベール、その手には秘宝の一つである『眠りの鐘』が。 コルベールは滅茶苦茶になった廊下や、打倒された教師達を見回すと、魂も吐き出すかのような溜息を突いた。頭髪が更に少なくなった。 この後、ちょっとばかり洒落にならない額の弁償金をルイズが払う事となったのは、物語とは更に関係無い話である。
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ゼロの使い魔の二次創作スレ、及びまとめへのリンク あの作品のキャラがルイズに召喚させました 多重クロス。本スレの100スレ突破記念企画です http //noname.mydisk.jp/aniversary/anniversary.html ゼロの奇妙な使い魔 まとめ ジョジョの奇妙な冒険全般 http //www22.atwiki.jp/familiar_spirit/ 新世紀エヴァンゲリオン×ゼロの使い魔 ~想いは時を越えて~@ ウィキ 新世紀エヴァンゲリオンの碇シンジとエヴァンゲリオン初号機 http //www10.atwiki.jp/moshinomatome/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです @ ウィキ STAR WARSのダース・ベイダー http //www33.atwiki.jp/darthvader/ ハガレンのエドがルイズに召還されたようです@まとめサイト 鋼の錬金術師のエド http //www34.atwiki.jp/fgthomas/ ゼロの傭兵 フルメタル・パニック!の相良宗介 http //www31.atwiki.jp/zeronosousuke/ ゼロの保管庫 Wiki 【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合のSSまとめページ。成人向け注意 http //zerokan.g.ribbon.to/ ゼロ使×型月クロスSSスレまとめwiki TYPE-MOON http //www13.atwiki.jp/zeromoon/pages/1.html ガンダムキャラがルイズに召喚されました@ウィキ http //www8.atwiki.jp/gundamzero/pages/1.html ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ http //www33.atwiki.jp/dai_zero/ イチローがルイズによって召喚されたようです@wiki メジャーリーグの(伝説化した)イチロー http //www39.atwiki.jp/ichiro-ruiz/ 社長がゼロの使い魔の世界に召喚されたようです@ ウィキ 海馬瀬人社長と嫁達(および一部の科学の結晶) http //www30.atwiki.jp/shachozero/ 謙虚な使い魔@wiki FF11(ネ実)キャラのブロントさん http //www40.atwiki.jp/kenkyotsukaima/ もしゼロの使い魔の○○が××だったら まとめwiki (非クロスオーバー) http //ifzero2.herobo.com/
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前ページ次ページゼロの大魔道士 「で、ですが!」 「そうはいいますが、ミス・ヴァリエール。ゲートから出てきたと思われる以上…」 現在、ルイズは非常に狼狽していた。 召喚に成功したと思えば、当の召喚獣――竜(マザードラゴン)が契約前に逃げ出してしまったのだ。 これは前代未聞の出来事であり、同時に大恥であることは間違いない。 いや、それだけですめばまだいいほうだ。 実家に伝わればヴァリエール家の恥として放逐されてもおかしくはない。 だが、絶望に沈もうとしていたルイズを拾い上げたのは何故か頬を赤らめたコルベールだった。 時間は数分前に遡る。 気色悪い呆け顔で「ぱふぱふ…」とか呟いていた彼コルベールが、ルイズの下に敷かれている人間に気がついたのである。 コルベールの指摘でようやくそのことに気がついたルイズは慌てて跳ね起きた。 生徒の誰かを尻に敷いていたまま放置していたのならばそれは十分に失礼な行為だからだ。 だが、見下ろした顔に見覚えはなかった。 それどころではない、気絶して寝転がっている少年は見たこともない服装をしているではないか。 「…なんで平民がここに?」 ルイズはぽつりと呟いた。 ここトリステイン王国には、決定的な身分差が存在している。 すなわち、貴族と平民だ。 その判別方法は至って簡単で、魔法を使えるものが貴族、そうでないものが平民というもの。 中には例外(貴族から没落したメイジ)などもいるが、この概念はトリステインに住む者ほぼ全てに適用される。 然るに、ルイズの目の前にいる少年はマントこそ着用しているものの、見たことのないデザインの服を身につけている。 そして杖は持っていない。 つまりは、この少年は平民であると判断されるわけである。 「ふむ、どうやらこの少年もサモン・サーヴァントによって現れたようですな」 「え?」 「ミス・ヴァリエール、この少年とコントラクト・サーヴァントを」 「へ、え? えええええ!?」 ルイズは驚いた。 このハゲ教師はいきなり何を言い出すのか。 そもそも、自分が召喚したのはあの神々しい竜である。 間違ってもマヌケ面を晒して気絶している平民ではないはずだ。 「召喚した生物とコントラクト・サーヴァントを行うのが今日の目的です。であるからして」 「ちょ、ちょっと待ってください! 私が召喚したのはあの竜で…!」 「ですが、逃げられてしまったでしょう?」 「う…」 容赦のないコルベールの一言にルイズはグウの音も出ない。 だが、コルベールとしてはこの場における一番の打開策を出したつもりだった。 確かに竜は逃げ出してしまったが、少年も召喚によって現れたことは間違いない。 となると、少年もルイズと契約を交わす資格を持っていることになる。 複数召喚などこれまた前代未聞の出来事だが、始祖ブリミルは四体の使い魔を所有していたという。 これはルイズが規格外の存在であることを示しているわけであり、少年もなんらかの特殊さを持っている可能性は高い。 ならば、この場を取り繕うという意味もあるが、とりあえずコントラクト・サーヴァントを行うのが一番良いはずなのだ。 「あはは、流石はゼロのルイズ!」 「召喚した使い魔に逃げられたと思ったら、平民と契約か!」 確かに…と納得しかけたルイズに周囲の生徒から野次が飛ぶ。 コルベールほど洞察に優れない彼らは単純な事実『竜が逃げた』『残ったのは平民』という二点を認識していたのだ。 「ううっ…」 ルイズはぎゅっと唇を噛んだ。 竜を使い魔に出来ると思っていたのにそれが平民にランクダウンしたのだから無理もない。 だが背に腹はかえられない。 使い魔に逃げられるという失態を犯した以上、もはやコントラクト・サーヴァントを嫌がるという選択肢は取り様がないのだ。 「し、仕方ないわね! アンタで我慢してあげるわ!」 そして時間は現在に戻る。 どうにか心の折り合いをつけたルイズは少年を抱き起こすと顔を近づけ、詠唱を始めた。 と、その時。 「う…あ…?」 少年が目覚めた。 意識はまだハッキリしていないのか、目がキョロキョロと動き回る。 だが、ルイズはそれに構わずに更に顔を近づける。 詠唱が終わり、少年――ポップの視界いっぱいにルイズの顔が映り、そして 「ん…」 契約のキスが交わされた。 「うっぐ…な、なんだ…!?」 ポップは急な痛みに意識を覚醒させた。 周囲の状況を確認するよりも先に痛みが体を駆け巡る。 その痛み、熱といいかえてもよいそれは左手へと集中していく。 そして数秒後、ポップの左手には奇妙な紋様が浮かび上がっていた。 「な、なんだこれ!? 呪いか!?」 「失礼ね! これはルーン。アンタが私の使い魔になった証よ」 「は? ルーン? 使い魔? 一体何を言って…」 「ああ、ごちゃごちゃうるさい! いい、私は今非常に気が立っているの! ああもうなんでこんな平民と…」 「落ち着きなさいミス・ヴァリエール」 癇癪を起こしかけていたルイズに近づいてきたのはコルベールだった。 (おいおい、冗談じゃないぜ…) ルイズをなだめすかしているコルベールを常識人と見たポップは状況を把握するべく彼に話を聞き、空を仰いだ。 サモン・サーヴァント、トリステイン、ハルケギニア… そのどれもが聞き覚えのない単語ばかりだった。 しかも、話をまとめると自分は目の前のピンクの髪の少女――ルイズというらしい、の使い魔になってしまったのだという。 (本人の承諾なしにそんなこと勝手に決めんなよ…) 既に自分を使い魔扱いしているルイズにポップは溜息をつく。 気になることは二点。 まず、ダイはどうなったのかという点だ。 話を聞いた限り、マザードラゴンはどこかへ飛び立っていったという。 彼女の性質上、人の目に付くような場所に降り立つとは思えないので発見は困難だろう。 (ようやく見つけたっていうのに…) 話を聞く限り、すべての原因は目の前の少女にある。 如何に女の子に甘いポップといえどもそういう事情となればルイズに好印象を抱くのは無理があった。 「何よその目は」 「いんや別に」 「言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」 一方、ルイズはルイズで目の前の少年に憤っていた。 彼女本来の目的からすればコントラクト・サーヴァントが成功しただけでも十分満足できるはずだったのだが なんせ竜→平民という格差である。 怒りを覚えるのも無理はない。 かくして、ルイズとポップという少年少女の邂逅はお互い共に悪印象から始まるのだった。 ついて来いとせかすルイズとそんな少女を心配気に見守るコルベール。 そんな二人を見ながらポップはもう一つの懸案事項――これからどうするか、を考える。 とりあえず、ここは見ず知らずの土地であることは間違いない。 目の前の人物たちが精霊や魔族に見えない以上天界ないしは魔界という線はない。 発見されていない大陸、というのも流石に考えづらい。 となると考え付くのは―― (異世界とか? まあ天界や魔界があるんだから可能性はあるんだが…あ、そうだ) ポップはこっそりとある呪文を呟いた。 その呪文の名は瞬間移動呪文ルーラ。 一度訪れた場所に一瞬にして移動できるという高等呪文の一つである。 (…発動しない? いや、発動後にキャンセルされた?) ルーラの発動自体は確かに起こった。 だが、ポップの体はその場から一歩も動かない。 そう、まるで『行ったことがない場所に向けてルーラを唱えた』かのように。 (おれは今確かに昨日のキャンプ場所を想像したはず…おいおい、マジで異世界の可能性が高くなってきたぞ…) バーンパレスのように空にバリアが展開されているわけでもない。 というかそうだとしてもある程度までは移動が行われるはず。 にもかかわらずルーラはポップの体を運ばない。 これが指し示すことはつまり、ルーラの効果が及びようがない場所に自分はいるということになる。 (勘弁してくれよ…) 大魔王と戦うなんていう非常識をこなしてきたポップからしても異世界に飛ばされたという事態は想定外にもほどがあった。 ダイはどこかへ行ってしまった、帰る方法はわからない。 生命の心配こそとりあえずなさそうではあるが、状況は最悪だといってもよかった。 (とりあえず、情報を集めねえと) ダイを探すにしろ、元の場所に戻るにしろ、右も左もわからない場所にいる以上情報は必須である。 長い間旅を続けてきたポップは情報の大切さをよくわかっていた。 そして、情報源として期待できるのは目の前にいる二人の人間であるということも。 (しっかし、契約ねぇ…呪いみたいなもんじゃねえか) 自分をおいてサッサと行こうとするルイズを半眼で睨みつつポップはどうしたものかと頭をひねらせる。 少なくとも自分は同意した覚えがないのに勝手に使い魔にされたのだ。 情報を集めるという目的上、主人だというルイズに友好を示すことはやぶさかではない、可愛いし。 しかし、使い魔というのは御免被る。 いくら可愛い女の子とはいえ、下僕にされるのは嫌だし、自分にはダイを探すという目的があるのだ。 そのためにはフリーな立場に戻らなければならない。 いっそこの場からトベルーラで逃げ出すか? そんな不穏なことを考える。 (待てよ、ひょっとしたら…) ポップの頭に閃きが走った。 現在、自分をルイズの使い魔たらんと示しているのは左手のルーンである。 つまり、逆をいえばルーンさえなければ使い魔契約は撤廃できるということになる。 だが、聞いた話では使い魔の契約が切れるのは使い魔、つまり自分が死んだ時だけだという。 当然、死ぬ気などサラサラないポップ。 (あの呪文なら…) この時、彼が思いついた方法は思わぬ事態を引き起こすこととなる。 だが、神ならぬポップは物は試しとばかりにその呪文を唱えた。 「シャナク!」 前ページ次ページゼロの大魔道士
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前ページ次ページゼロと疾風 黒い壁があった。それは、例外なく目の前に現れる。ストリートのガキにも、大統領でさえ。 ほとんどのモノは、それを砕くことは出来ず、乗り越えようとするモノは爪が剥がれ、赤い筋を残すことになる。 ほとんどのモノはその壁から目をそらす。しかし、その壁に真っ向から向かい合っているモノもいる。 その黒き壁にあがこうとする人間がいる。この物語はそんな人間の物語。 現在、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは医務室にて頭を抱えて一人の男を見ていた。男はベッドの上で気を失っている。 ルイズは二年生へ進学する際のサモン・サーヴァントによってこの男を召喚・契約したのだ。 「なんで、こんな奴召喚しちゃったのよ・・・・・・」 先日、「サモン・サーヴァントには自信がある」と言ってしまったばかりである。 その結果がこれ。 本来、動物や幻獣を召喚するサモン・サーヴァント。その、儀式で人間(そのうえ、気を失っており、かなり傷ついている)を召喚してしまったのでルイズは周りのギャラリーから笑いものにされた。 その場にいたコルベール先生が彼の身なりから判断し。 「彼は凄腕の傭兵であるにちがいない」と言っていたが、メイジに平民に敵うはずが無い。 いくら、凄腕といっても平民の傭兵を召喚しては意味が無い。 「どうしようかしら・・・とりあえず、雑用でもさせようかな?」 ルイズがそんなことを考えていると男の眼がゆっくりと開き、起き上がった。 白髪の男性はチップという。彼は自称ジャパニーズ、しかし、大統領を目指している忍者である。 チップが長い眠りから眼を覚ました。頭がまだぼやけている。 チップはよく頭をめぐらせた。 (そうだ、I=NOのやつと戦っていたら急に何かに巻き込まれたんだった・・・) チップはI=NOの時間移動に巻きこまれたのだ。そんでもって、気がついたここにいる。 「やっと気がつたのね」 声のした方向を向いてみると一人の少女がいる。ルイズである。 「まずは自己紹介でもする?私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。一応よろしく」 隠れた表情を読むのは忍びの基本だ。チップが彼女から読み取った表情。 見下し、怒りをとおり越した諦めetc 少なくともチップの嫌いな人間に当てはまっている。 しかし、相手が名乗ったのだ。自分も名乗るのが筋だろう。 それに、ここが何処だか分からない。 「チップ、チップ=ザナフだ。ここは何処だ?薬品の臭いがするってことは病院かなんかか?」 「ここは、トリステイン王国・トリステイン魔法学院の医務室よ」 チップの聞いたことが無い地名だ。それに、魔法学校というのは法術に関する機関だろうか。 「とりあえず、ここを出ましょう。私の部屋で貴方が今置かれている立場を教えてあげるわ」 チップがルイズとの状況確認によって分かったこと。 この世界(月が二つあるのでチップのいた世界ではない)では魔法使いがいて、彼女は魔法使いの貴族である。 そしてこの場所は貴族が通う魔法学校である。 学生は二年生になるとき使い魔を召喚する。 チップはその使い魔を召喚するサモン・サーヴァントによって召喚された。 召喚される使い魔は自分での選択は出来ない。 使い魔は本来幻獣や動物が召喚される。 一度召喚されたからには変更は出来ない。(召喚のやり直しを求めたが却下されたらしい) チップとはもうすでに契約を行っており、証拠は左手に刻まれているルーン。 元に戻る方法は少なくも彼女は知らない。 大体こんな感じだ。他にもなんか言っていたが正直チップは興味なかった。 ルイズがチップとの状況確認によって分かったこと。 チップは異世界から来た。 (幾つかその世界について質問したがすぐに答えが返ってきた。特に矛盾点は無く嘘をついている様子も無いので一応信じる) チップは異世界ではニンジャという種類の傭兵である。 現在、ローニン(雇い主無しのフリー状態という意味らしい) チップの世界には法術があり、それは魔法と少し似ているらしい。 I=NOという女と戦っている最中、その女の何かに巻き込まれ気がついたらここにいる。 他は特に興味なし。 部屋着いてからこれらの状況確認に1時間かかった。この時間が短いと感じるか長いと感じるかは皆さんの自由だ。 「とりあえず、私は貴方の生活の保障、それと元の場所に戻れる方法を探すわ。 その代わり、あんたはその間私の使い魔、つまりわたしに雇われる。それでいいわね?」 「しょうがねえな・・・わかったよ」 ちなみに、状況確認からこのやり取りまで、更に30分間。正直メンドイので省略。 こうして、チップとルイズの生活が始まった。 「とりあえず、もう疲れたわ。朝になったら起こしてね。それと、洗濯頼んだわよ」 「はあ?なんで俺がそんなことしなきゃならないんだ?エリカだってそんなこと言わなかったぞ」 「エリカって誰よ?」 「俺が前仕えていた奴だ。大統領をやっていたな」 「ダイトーリョーってなに?山賊や大工の凄いバージョンの親玉?」 「国の代表だ、王様みたいなもんだ。いや、王様は『成ることが出来る』もんだが大統領は『選ばれなきゃ成れない』つまり、王様より偉い奴だ」 「へー」 「でもって、俺はその大統領に雇われていたが、 そんなこと頼まれなかったぞ。王様より偉い奴がしなかったことをテメエはするの?」 「う・・・」一時間半以上の怒鳴りあいによって疲れているルイズには論破する気力はなかった。 「洗濯ぐらい自分でやれ、あと自分で起きろ」 ルイズとチップの生活は前途多難だ。 「じゃあ、あんたが寝るところだけど・・・」 「別に必要ねえよ」 「へ?」 「忍びは闇に潜み主を守る。用があるなら手を叩け」 そういうとチップは闇に消えていった 部屋に取り残されたルイズは考えていた。 雑用などは断っていたが、あの身のこなしは凄い。 「意外と使えるのかな?」 最初決めていた彼の扱いを少し変えなくては、と考えた。 しかし、今は眠い。 「明日考えよ」 ルイズはそういい終えると服を脱ぎ、ベッドにもぐり寝息を立て始めた チップはやるからにはやる男だ。 物には必ず『芯』がある。守るも攻めるも、まずはこの芯を押さえる。チップはまず魔法学校の芯を探した。 歴史の古い建物というだけあって、様々な隠し部屋・隠し通路などがあった。 チップはその中のある隠し部屋に陣取った。ここなら、どんなことが起きようとすぐに分かる。 チップも疲れていたのか、全神経を研ぎ澄ませて眠りについた。 前ページ次ページゼロと疾風
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前ページ次ページゼロと損種実験体 夜が開け、木々や小さな動物達が目覚める時間。 泡沫の眠りから目覚めようとする瞬間こそが、人が最も至福を感じる瞬間だとルイズは信じる。 目覚めるか目覚めないかのまどろみと、自身の人肌に暖まった布団。この幸せをもっと味わおうと、ルイズは毛布に潜り込む。 いわゆる二度寝である。 だが、今日に限っては、至福の時は不埒な何者かによって妨げられる。 「いつまで、寝ている気だ。さっさと起きろ」 耳に馴染みのない男性の声と共に、毛布は剥ぎ取られ、更に首根っこを持ち上げられ子猫のようにつまみ上げられる。 「ふにゃ?」 何が起こったのか理解が追いつかず、声の主であろう男を見やる。 そこにいたのは、がっしりとした体格の黒いシャツを着た、顔の左に広く傷跡を残した見覚えのない何者か。 「だっ、誰? なんで、わたしの部屋に見知らぬ男が!?」 「寝ぼけるな。昨日お前が召喚したんだろうが」 左手に刻まれた使い魔のルーンを見せてくる男に、そういえばそうだったわね。と持ち上げられたまま拍手を一つ。 なんだか分からないけど偉そうな亜人を召喚してしまい、紆余曲折あって契約のキスをすませたんだった。 ファーストキスだったけど、使い魔だし亜人だしノーカウント。そういえば、ミスタ・コルベールが珍しいルーンだとか言ってスケッチしてたような。 「でも、なんでこの状況?」 「お前がいつまでも起きないからだ」 「へ?」 首を傾げる。窓から差し込む光からみて、いつも起きている時間と比べるとまだ早い。 起き抜けで回らぬ頭で告げる言葉に、その男、アプトムは渋面になる。 「お前がいつもどの時間に起きてるか知らないが、昨日寝る前に自分が何を言ったか思い出してみろ」 「寝る前? 何か言ったっけ?」 首を捻るが、いい感じにボケた寝起きの頭は答えを出してくれそうにない。 「『使い魔の役目を説明したいけど、今日はもう遅いし明日の朝に教えるから早めに起こして』 お前は、そう言って布団に潜り込んだんだがな」 言われてみれば、そんな事を言った気がしないでもない。 「えーと、ごめん」 「もういい。それより使い魔の役目というのをさっさと説明しろ」 なんか偉そうね。と思いつつも、半ば寝ぼけたままの頭のおかげか、怒りは涌いてこない。 というか、説明したら二度寝させてくれるかしら。 使い魔の役目は大雑把にわけて三つ。 一つ目は、主人と視覚聴覚を繋げ、自分の見たものを主人に伝える。鳥のやコウモリのような空を飛ぶ使い魔に与えられることの多い役目。 二つ目は、主人の指示に従い、主人の求める秘薬の材料を探し見つけてくる。モグラやトカゲのような人が入り込めないような所に行くことのできる使い魔に与えられることの多い役目。 そして三つ目、主人を守り戦う。人と同じかそれ以上の体躯を持つ使い魔に与えられる役目。 「つまり俺の役目は、お前に危機が迫った時に守って戦うことなんだな」 「うん。なんでか視覚も聴覚も繋がってないみたいだし。あと、わたしのことはお前じゃなくてお主人様って呼びなさい」 答えながら、なんとなしに昨日見たアプトムの姿を思い浮かべる。 オーク鬼と同じくらいの体格の爬虫類に似た亜人とその首に貼りついた腕……。 「って、何よアレ!?」 「急に、どうした?」 どうもこうもないだろうと、思い出した事を追求する。先日は自分もコルベールもうっかり追求を忘れていたが、放っておいて良い話題ではないとルイズは思うのだが。 「大したことじゃない。それと、昨日のあれが俺の本当の姿というわけでもない」 などと不可解な答えが返ってきた。 どういう事なのか、しっかり説明しなさいと命じてみたが、説明しても理解できないだろうと言われた。まあ、確かに先住の変身魔法なんか説明されても理解できないだろうし、なんだかどうでもよくなってきた。と言うか眠い。 変化の先住魔法とは何だ? アプトムは、昨日から何度も思い、しかし質問のタイミングが取れなかったために保留したまま忘れていた疑問を頭に浮かべるが、聞いても答えは返ってこないだろう。 なにしろ自称ご主人様は、彼に摘み上げられたまま寝入ってしまったのだから。 しかも「授業の前に朝食だから食堂に連れて行ってね。その前に着替えも」などと寝言なんだか分からない言葉まで残してだ。 ふざけるなと、ベッドに投げつけてやろうかと思ったが、子供の言う事にいちいち腹を立てるのも大人気ない。 だからといって、本当に寝ているルイズを着替えさせてやるのはどうだろう。とは、アプトムは考えない。 相手は、おそらくは12か13歳の子供でしかも貴族とやらだ。彼女にとってこれらは、ごく普通の言動なのだろうし、彼はいい歳をした大人である。意味もなく反発しようとは思わない。 アプトムは子猫のようにぶら下げたルイズを持ってクローゼットに向かう。 ルイズの年齢は16歳なのだが、彼はまだそのことを知らない。 着替えさせて、まだ眠ったままのルイズを担いで部屋を出ると、ちょうど同じようなタイミングでルイズより軽く五歳は年長に見える赤い髪の少女が別の部屋から出てきていた。 「おはよう。ルイズ」 アプトムの肩の上のルイズに気がついた少女の朝の挨拶に、ルイズは薄目を開けて「おはよう。キュルケ」と返してまた重い瞼を下ろす。 「なんか、眠そうね」 「昨日は、夜遅くまで話をしてた上に、布団に入ってからも興奮して中々眠れなかったようだからな」 話をしていたのは、ほとんどがアプトムとコルベールで、ルイズは付き合いで起きていただけのようなものだったが。 「ふーん。あなたがルイズの使い魔?」 肯定すると、キュルケはアプトムを指差し笑った。 「あっはっは! ほんとに人間なのね! 『サモン・サーヴァント』で平民呼んじゃうなんて、さすがはゼロのルイズだわ」 その言葉に、なるほど自分の獣化について知られていないようだな。とアプトムは昨夜のコルベールとの会話を思い出す。 ルイズとの契約を済ませた後、コルベールはアプトムが亜人であることは隠して欲しいと頼んできていた。 亜人で先住魔法の使い手の使い魔だなどと、アカデミーにでも知られれば、取り上げられるのは間違いなしと言われルイズも同意した。 アプトムとしても、そんなところに連れて行かれてモルモットにされるのはごめんだが、隠したところであの召喚の場に居合わせたものが喋れば同じことだろう。それ以前に自分は亜人などというものではないが。 だが、コルベールは召喚の瞬間と変身するところは誰も見ていないはずだと言う。 あの時、ルイズ以外の生徒は皆、召喚と契約を済ませていた。ルイズだけが終わらせてなかったのは、彼女が何度も召喚に失敗していたからで、アプトムが現れた時にはもうルイズの召喚の魔法の失敗笑うのにも飽きて、彼女を注目している者はいなくなっていたのだ。 「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわわねぇ~。フレイム」 キュルケが呼ぶ声に応えて、巨大な赤いトカゲがのっそりと姿を現す。 虎ほどもある体躯と、呼吸と共に口からこぼれる炎に、これは自分と同じで主人を守る役目の使い魔だな。と思っていると、キュルケがつまらなそうな顔になる。 「驚かないの?」 そう言われても、彼はこのハルケギニアを地球とは別の惑星だと判断している。ついでに言うと、メイジも地球の人類と似た姿をしているだけの別の生き物だと思っている。ここで、未知の動物が出てきたところで驚くには値しない。地球でも見られる普通の動物が出てきたほうがよっぽど驚いだろう。いや、普通の動物もいるのだが。 もっとも、彼らの文化レベルから考えて別の星から来たなとと言っても頭がおかしいと思われるだけなので「珍しいのか?」と答えておく。 「珍しいのよ! 火トカゲよ! ほら見て、この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。ブランド物なんだから! 好事家に見せたら値段なんかつかないんだから」 そう言われても比較の対象がないのだから感心のしようがない。 反応の薄いアプトムと、本当に見せびらかしたかった相手であるのに舟を漕いでいるルイズに、キュルケはつまらなそうな顔になる。 「じゃあ、お先に失礼」 踵を返し立ち去ろうとするキュルケだが、それをアプトムが呼び止めて言う。 「悪いが食堂の場所を教えてくれ」 キュルケに案内されて行った食堂は、学園の敷地内で一番高い本塔の中にあった。 無駄に広い食堂内には、やはり無駄に長いテーブルが三つ。テーブルには豪華な飾りつけと豪勢な料理。なんのパーティだといいたくなる様だ。 「朝から、こんなに食べるのか?」 呆れた声を出すアプトムに「そんなわけないでしょ」と答えが返ってくる。 朝からそんなに入るわけがないし、この学院に通う生徒は皆貴族なのだが、貴族たるもの出された料理を全て平らげるような、はしたないことはしない。適当につまんでお腹が膨れたらあとは食べ残すのだ。 「なんともコメントし辛いものだな」 言って、ここだと教わった席にルイズを座らせると、さすがに目を覚ましたらしいルイズが、ここがどこだか分からないのか小動物のようにキョロキョロと周りを見回しアプトムを見つけて納得した顔になる。 「あー、食堂ね。うん。分かってる。わたしが連れて行けって言ったんだもんね」 「何を言い訳している。いいから、さっさと食べろ」 「うん。偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうことを感謝いたします……。 ってそういえば、あんたの食事を忘れてたわ」 言われて見るとその通りである。というか、アプトム本人は自分が食事を必要とする生き物であることを失念していた。 アプトムには融合捕食という、他者をそのまま栄養分として取り込む能力がある。別に普通の食事が出来ないわけではないが、こちらの方が効率がいいし、ここに来る前には獲物となる敵にも不自由しなかったので、食事という行為を長らくしてなかったのだ。 だが、こちらではそうはいくまい。ルイズの使い魔という立場である以上、その辺りを歩いている人間を獲物にするわけにはいかないし、優れた遺伝子情報をコピーするという戦闘生物の本能が、獣化兵ですらない人間を融合捕食するという行為に積極的ではない。 しょうがないわねえ。とルイズは嘆息する。 この使い魔が反抗的な平民とかだったなら、肉の切れ端の入ったスープと固いパンでも食べさせていたのだろうが、そうではないし何の用意もしていない。 「わたしの食事を分けてあげるから適当につまみなさい。主に、はしばみ草とかを」 そう告げると、ルイズは食事に取り掛かったのだった。 この期に及んでも半ば寝ぼけたままのルイズが、朝食を済ませアプトムに学院のことを話しながら授業のために向かった教室に入ると、先に来ていた生徒の多くがルイズと次にアプトムを見て聞こえよがしに笑い声を上げる。 あからさまな嘲りの笑いに訝しく思ったが、先に朝食を済ませて教室に来ていたキュルケを見つけて、そういえば平民がどうの言っていたな。と他の生徒が連れている使い魔らしき動物たちを見回し、自分以外に人間の姿をした生き物はいない事を確認する。 人間の何に問題があるのかは分からなかったが。 そして、ルイズはと言えば困惑していた。 彼女の主観では、自分が召喚したのは亜人でしかも先住魔法で変身までして見せる凄い使い魔である。 しかし、他の生徒は人間の姿になった後のアプトムしか知らず、コルベールとの話し合いによって、ただの平民を召喚したという事になっているので、ルイズが間抜けにも何の役にも立たない平民を使い魔にしたと思い込んでいた。 ルイズも、アプトムの正体を隠すことに同意し、彼がただの平民と見られていると知っているのだが、現実としてアプトムがただの平民などではない事を知っているために、認識に食い違いがあるのだ。 そんなこんなで、居心地悪げにルイズが席に着いた後、アプトムは自分はどうしようかと考える。 授業中の教室に大の男が突っ立っていたら邪魔だろうし、後ろに下がっていたほうがいいのかもしれないが、自分の使い魔という身分を考えるとルイズの傍にいた方がいいのかもしれない。 どうしたものかと尋ねてみると、ルイズは少し考えて「隣に座ってて」と答えてきた。 そこには、貴族でもない者を座らせていいのだろうか? でも平民じゃないし、よくみたらコイツ目つき悪いいし怒らせたら恐そうだし。 なんて葛藤があったりしたのだか、そんなことはアプトムには分からない。 二人が席に着いてすぐに教師なのだろう、中年の女性が教室に入ってきて教卓の前に立った。 「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 そう言って教室を見回したミセス・シュヴルーズの視線がアプトムで止まる。そこに込められた感情は、疑問。 彼女は、コルベールにルイズの召喚した使い魔が少し特殊なので注意しろと言われていたが、どう特殊なのかは聞いていなかった。 だから、どう特殊なのかと思ったのだが、そこにいたのは大人しくルイズの隣に座る平民の男が一人。人間を召喚して使い魔にするというのは珍しいが、凶暴な幻獣でもあるまいに特に注意しなければならない理由が分からない。 もしかすると顔の左側にある大きな傷跡のことを言ってはいけないとかそういう理由なのかもしれない。一人納得すると、微笑んでルイズに言う。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 その言葉に悪意などひとかけらもなく、ルイズも確かに変わった使い魔だと心中同意したのだが、そこにありもしない悪意を感じ便乗するものたちがいた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 小太りの少年が笑いながら吐き出した言葉には、強い相手を見下す嘲りの響きがあり、ルイズはそれに敏感だった。 「違うわ! きちんと召喚したもの!」 「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?」 笑いに包まれた教室の中、その対象の一方であるアプトムは呆れた目で、笑う生徒たちを見る。 事情を知らないアプトムだが、聞いていればルイズが出来のいいメイジでなく、そのせいで馬鹿にされているのであろうことは察しがつく。だが、あまりにも大人気ないだろう。 見たところ、彼らも15~18歳の子供なのだろうが、それでも更に年少の子供であるルイズが実力で劣ることを笑うなど、褒められた話ではない。 ルイズが彼らより年少だというのは、アプトムの誤解なのだが。 それに、ルイズが年少の子供でなかったとしてもだ。と朝食の後、教室にくるまでにルイズが言っていたことを思い出す。 「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ。メイジは、ほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法をもってその精神となす』のモットーのもと、貴族たるべき教育を、存分に受けるのよ」 貴族たるべき教育を受けた結果が、これというのはお粗末すぎるだろう。 「では、授業を始めますよ」 シュヴルーズがそう言ったのは、ルイズと小太りの少年の言い争いが収まったというか、彼女が力ずくで収めた後のこと。 そうして続くシュヴルーズの話をアプトムは適当に聞き流す。ルイズたちはこの学院の二年生であり、つまりこの授業は一年の教育を前提として進められるものである。そんなものを魔法などというものと無縁な世界で生きてきた自分が聞いても理解できるとは思わなかったし理解したとしても、このハルケギニアの住人ではない自分には使えないだろう。 むろん、将来メイジと敵対かあるいは共闘する可能性があることを考えれば、魔法で何ができるかは把握しておく必要があるだろうが。 シュヴルーズが、先にルイズと言い争いをしていた小太りを指名して質問をしたり、火水土風の系統がどうの、失われた虚無の系統がどうの自分は土系統だのと話していたがアプトムの興味は惹かない。 シュヴルーズが錬金の魔法とやらで教卓の上に置いた小石を真鍮に変えた時は、流石に少し驚いたものの、やはりアプトムの興味を惹くものではなかった。 アプトムが興味を惹かれたのは、シュヴルーズが錬金をやってみなさいとルイズを呼んだときである。魔法自体には興味のない彼だが、ルイズには立派な魔法使いになって自分を地球に返す魔法を開発してもらわなければならない。 となれば、ルイズの魔法の実力を見ておいて損はない。出来が悪いのだろうことは察しているが。 そして、他の生徒の「やめて。ルイズ」「はやまるな」「思いとどまれ」「君のご両親は泣いているぞ」「ちょっとまてよ!」「なんです?」という応援の言葉を送られたルイズは、ルーンを唱え「えい、やー」と杖を振り下ろし。アプトムとシュヴルーズ以外、全員の期待に応えて小石を爆発させた。 その爆風は、人一人を容易く吹き飛ばす威力。爆音は、耳元で破裂した爆竹の如し。 ゆえに、至近距離にいたルイズとシュヴルーズは黒板に叩きつけられ、教室にいた使い魔たちは驚き暴れだし生徒たちもそのカオスに巻き込まれた。 「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」「俺のラッキーがヘビに食われた!」 「チャッピー! エサ!」「対抗しようとするな! ナマモノ!」 悲鳴と怒声の上がる阿鼻叫喚の最中、煤で真っ黒になり、服もボロボロにしたルイズが無表情にで立ち上がり、ハンカチで顔の煤を拭いながら淡々と一言呟いた。 「ちょっと失敗したみたいね」 もちろん、その言葉は他の生徒たちの逆鱗に触れた。 「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないかよ!」「何事もなかったような顔して誤魔化そうとしてるぞ!」「許すな!」「くらわしてやらねばなるまい、然るべき報いを!」 怒号の響く中。なるほどな、とアプトムはゼロのルイズという呼び名の意味を理解する。 戦闘生物を自認する彼からすれば、錬金などより爆発の魔法の方がよほど有用性がありそうにみえたが、そんな事を言っていては、ルイズに帰還のための魔法を使わせるなど夢のまた夢だな。と嘆息するのだった。 前ページ次ページゼロと損種実験体
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今日も今日とてルイズはお決まりの召喚をしていた。 ――そして、『それ』は現れた。 「あんた誰?」 爆音と共に姿を見せた平民らしき人物にルイズは呼びかける。 帰ってきた答えは―― 「武器や防具は装備しないと効果が無いよ」 「・・・へ?」 「武器や防具はry」 一瞬、まるで小島よしおが熱湯風呂に入った時のような沈黙が訪れた。 なんとも言い難い、痛々しい目線がルイズとその平民の男に向けられる。。 それはそうだろう、これが唯の平民ならば、『おい!ルイズが平民を召喚したぞ!』 などと言って、笑い物にするのだろう。 しかし、目の前に現れたのは―― 「武器や防具は装備しないと効果が無いよ」 としか『言わない』、のではなく、『それ以外の反応が無い』。という人物だったからである。 容姿自体はいかにも普通の男性であり、服装もまさに平民といった格好である。 だが、目は虚ろで焦点が分らない、ヤク中の末期患者と見まごう姿だった。というかそれ自体なのかもしれない。 最近噂のものを例に挙げるとすれば邪神セイバーあたりだろうか。 これには閉口するしかない、そしてこういう場合はなるべく関わりたくないものだ。 周囲の反応も 「おい・・・あれ・・・」 「いくらルイズでもあれは流石に・・・」 などといった、憐みと同情の言葉が発せられる。 「・・・ミスタ・コルベール!もう一度召喚させてください!!」 「ミス・ヴァリエール、これは伝統です。・・・お気持ちは大変察しますがやり直しは出来ません」 涙目になりながらルイズは言う。しかしコルベールはルイズに目を合わせず却下した。 「うう・・・唯の平民ならまだしもなんでこんな人間かどうかも怪しいやつなんかと・・・」 酷い言いようだがルイズはこの『平民』と契約しなければならないのだ。 会話は困難を極めるだろう、王様から剣一つも買えないはした金渡されてホイホイと魔王退治に行く 「はい」「いいえ」のセリフもとい選択肢しか無い勇者でももう少し高レベル会話が可能なもんである。 そして、その『平民』にルイズは唇を重ねた―― 後に、この使い魔はあらゆる武器を使いこなすガンダールヴとしてその力を遺憾無く発揮することとなる。 (しかし、ガンダールヴの主はこの使い魔の存在を否定したとかどうとか。) 死後も伝説として残り続け、彼が生涯に残したたった一つの言葉はあまりにも有名であり、王様の近衛兵から村人Aまで多岐に渡って語り継がれている。 『武器や防具は装備しないと効果が無いよ』 これは彼を表す言葉であり、伝説の名言となった。 ――しかし、どうしても彼の名前だけは分らなかったとか。 ~完~ -RPGにおける村人Aを召喚
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前ページ次ページゼロのヒットマン ここはとある町でのことだった。 「たまには散歩もいいですね、十代目。」 「そうだね。」 ツナと獄寺は町を楽しそうに散歩していた。すると突然不気味な鏡が現れました。 「なんだこのヘンテコな鏡は、」 獄寺が鏡に手を触れた瞬間、獄寺が鏡の中へと吸い込まれていった。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 「獄寺くーーーーーーん!大変だリボーンに知らせないと。」 その頃、ハルケギニアの世界ではルイズが召喚の魔法の儀式を行っていた。 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!神聖で美しく!そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ!我が導きに、 応えなさいっ!」 杖を振り下ろすと、爆音とともに煙が巻き上がった。 「げほっ、げほっ、使い魔はどうなったの。」 煙の先に現れたのは、銀髪の男で服装はハルケギニアではみかけない格好だった。 「いてててててっ、ここは何処だよ、何がどうなっちまったんだよ・・・・・・」 「あんた誰よ?」 「俺は獄寺隼人だ!それよりもおめぇこそ誰だよ!訳の分かんねぇ世界に来ちまって俺は混乱してるんだ!」 獄寺は怒りを露にしながらルイズに質問した。 「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。」 「長ぇよ!そんな名前!」 「ルイズでいいわよ。」 「それよりもここは何処だ!それになんで俺がこんな世界にいるんだよっ!」 「ここはハルケギニアのトリスティン魔法学校で、あんたは私の『サモン・サーヴァント』という召喚の魔法で呼び出され使い魔よ。 しかしなんで私の使い魔がこんな平民なのよ。ミスタ・コルベール!召喚をもう一度やり直させて下さい!」 ルイズはローブを纏って杖を持っている禿頭の中年男に言う、しかし男は首を横に振った。 「ダメです。一度召喚された使い魔は変更することはできません。」 「そんな・・・」 コルベールのその一言にルイズは少しショックを受けた。それを見ていた生徒達は 「おいルイズ!召喚で平民呼び出してどうすんだよ!」 「さすがゼロのルイズ。召喚したのが平民なんて傑作だ。」 「うるさいわねっ!私だって好きでこんな平民呼び出したわけじゃないんだからね!」 ルイズと生徒達が争っていると、後ろから獄寺がなにやら不満そうな態度を見せていました。 「さっきから俺を無視しやがって、それに俺を平民平民と呼びやがってふざけんじゃねえ!俺は十代目の右腕となる存在だ! 喰らえ!ハリケーン・ボム!」 獄寺がポケットからダイナマイトを取り出すとそのダイナマイトが発火し、そのダイナマイトは生徒達へと向かっていった。 ボガーーーーーーン! 「げほっ、げほっ、何だよ平民のくせに。」 「おめぇらもう一回ハリケーン・ボムを喰らいてえのかっ。じゃあ果てろ。」 獄寺の鋭い目つきと手に持っているダイナマイトを見た生徒達は 「ルイズの使い魔のあいつヤバそうだぜ。」 「じゃあ逃げるしかねぇよな」 あまりにもやばいのか逃げ出しました。 「獄寺!あんたのその技すごいのね!」 「当然だ!俺は十代目の右腕となるために強くなったんだ!それよりも俺を元の世界に帰してくれ!あっちでは十代目が俺のこと心配してんだ!」 するとルイズは首を横に振った。 「無理よ、元の世界に帰す方法がないのよ。」 「そうかよ、だったら俺はお前の使い魔にでもなんにでもなってやる!ただしその代わり俺を十代目の所へ帰す手段を見つけろよ!」 「分かってるわよ!」 そういうとルイズと獄寺は魔法学校の遼に戻りました。 その日の夜の事でした。ルイズは獄寺にこんな質問をしました 「そういえばあんたの言ってた十代目って誰なのよ。」 「なんだよいきなり・・・・まぁ教えてやるよ。十代目っていうのは沢田綱吉のことだ。俺は初めてあの方と会ったとき、なんでこいつがボンゴレファミリーの 十代目なんだよって思ったんだ。しかしあの方と戦ってみて俺は負けたんだ。あの方こそボンゴレファミリーの十代目にふさわしいとな。」 「そうなんだ。あんたにも大切な仲間がいたのね。」 それからルイズと獄寺は眠りにつきました。 眠りについてから数時間後、獄寺は変な夢を見ました。 「獄寺くん!獄寺くん!」 夢の中でツナが獄寺を呼んでいました。 「十代目、一体何ですか。」 「獄寺くん早く帰ってきてくれよ!みんなも獄寺くんの帰りを待ってるんだ!」 「すみません。俺はまだ十代目の元へは帰れません。」 「なんでだよ!みんなが獄寺くんの事を心配しているんだよ!」 「十代目、俺は・・・・・・」 夢の中で獄寺がツナに何か言おうとしたその時 「ご~~~く~~~で~~~ら~~~っ!」 ルイズが怒った表情で獄寺を起こしました。 「うわっ!ビックリさせんなよっ!」 「ビックリしたのは私の方よ!いくら叫んでも全く起きなかったんだから、いったいどんな夢を見たのよ。」 「そんなのお前には・・・・・」 「いいから答えなさいよっ!」 獄寺はルイズに自分が見た夢の内容を話した。 「そうなんだ。つまりその十代目の人が獄寺の帰りを待ってるんだ。」 「そうだ!俺は一刻も早く十代目の元へ帰る手段を見つけるんだ!」 「いつになるか分からないけど必ず見つけるわ!だって獄寺の頼みなんだから。」 しばらくして獄寺はルイズにこんな質問をしました。 「そういえば、なんでルイズはあいつらにゼロのルイズって呼ばれてんだ。」 ルイズは悲しげな表情で答えた 「それは・・・・私はどんな魔法を使おうが必ず爆発して失敗してしまうのよ。この世界では魔法を使えないことなんて考えられない事なのよ。 それでお父様もお母様も、エレオノールお姉様も私に何一つ期待しなくなったのよ。」 「そうだったのか。悪かったなこんな事聞いちまって。」 「いいのよ。獄寺に私の辛い気持ちを伝えることができたから・・・。」 ルイズの悲しげな表情を見た獄寺は 「魔法なんて努力すれば使いこなせるようになんだからよ。あんまりメソメソすんな。俺も十代目の右腕として頑張ってるんだからお前も頑張れよ!」 「ありがとう・・・・獄寺。」 前ページ次ページゼロのヒットマン